(ディスカッションから一部抜粋)
藤本:植さんは吉村さんの元所員ですよね。二人の間のやり取りを聞きたいですね。
吉村:僕は藤本さんが言ったのと同じ感想で、宣言しないっていうのはすごいスマートな選択なんですよ、この会議にいるときに。でそれをやるようなタイプじゃなかったので驚いてます。
植:私は二人でやっています。パートナーの影響もあるんですけど、自分に建物建ててくださいと来られた方とお話をして設計をしていく上で、そっちの方が興味があるような気がしています。
藤本:うまいけど、へたくそで、そこが気になった。アイデアもスマートで、民家の屋根をガラスにするとか、コンクリートブロック塀で壁にするとか。スマートだけど、詰めが驚くほどへたくそ。現場でも行ったけど、あの路地みたいな空間を作るアイデアはすばらしいです。でも路地のデザインがなされていない。かすかにコンクリートのパターンでスマートに扱ってんだけど、うまいよね。っていうぐらい。もっと突っ込んでいいとおもうし、突っ込めるはずなんだよなぁ。
植:展示を見せながら説明をしていくとき、路地はつくったほうがよかったなって説明しながら思った所ではあります。例えばコンクリートブロックは普通、よく見るのは塀で使うとか、穴空きコンクリートブロックのパターンを使うのも面白いかなと思うんですけど。
藤本:個人的に皆さんに聞いてみたいのは、例えば、僕が30前後のときって、妹島さんがいて、その間に塚本さんとかの世代がいる。僕らから見ると、塚本さんぐらいの世代に対しては、若干の反発があったんですよ。妹島さんとかの建築がいいなーと思っていて。たまたま、僕の個人的な好みにもちょっと合わなかったというのもあって、反発もあったりして、俺の建築はちょっと違うぜみたいな。みなさんは素直な様に見えるんだけど、僕らの世代って中途半端的な立ち位置じゃないですか、皆さんから見たら。どう思ってらっしゃるんですか。影響が全くない、って言われるのもまた寂しいんだろうなとか思うんだけど、正直そのへんどうなんだろうって。
植:私は正直な所、藤本さんのSDの積層のやつに、かなり衝撃を受けました。今では、ちょっとやり過ぎじゃないかなとも感じます。その反動もあって、私はこういうスタンスになのかもしれません。飽きのこない方がいいなと思ったんですよ。地味に、噛めば噛むほど見たいな感じです。
藤本:僕が、これ面白いだろうと大振りなジェスチャーでやってるのが、逆に空回りしてんじゃないのみたいな。本当にいいものは、かすかな、コンクリートブロックの中にこだわりがあるからこそ宿るんだっていう、すごく極端な言い方をするとまあ、そんな感じなんですかね?
植:そうですね。それも一つです。
吉村:いつぐらいから、考えが変わっていったって感じなんですか?
植:吉村さんの所で修行したりとか、自分でお施主さんとやり取りをしていく中で、学生のときとは違う感覚になりました。前のシンポジウムのとき、パンチがないみたいにいわれましたが、それを期待するなら、U-20とかの方がいいんじゃないかなって私は思いました。
藤本:別の言い方をすると、パンチがないってコメントしてるその価値観自体がダサいよって言いたいわけでしょ。
岩瀬:前回からいろいろ考えました。インパクトっていう言葉で議論が表面的になり凄くいやでした。私たちはインパクトを違うものとして捉えています。形がどうだからインパクト、とかそういうレベルじゃないと思うんです。でも議論がその話をしないままインパクトは大事だ、インパクトは大事じゃないか、インパクトが好きかといった話をしていました。私はインパクトが嫌いということは全くなく、作ったものに対してどれだけ、周りとか使う人にとって影響と良い意味での豊かな影響があるかっていうことに、興味があるなと思ってます。形が普通だって言われても、私はそれが良いと思ったからそうしたとしか言えないなと感じました。
平沼:藤本さんが言われた、妹島さんの世代にインパクトがあって、塚本さん達が少し皆さんと同じような手法で見せているようにも感じていて、というのは日本だけの状況ですか?
藤本:海外はそこまで詳しくは分かんないですけど、どうなんでしょうか。でもあれですよね。塚本さん達の世代とみなさんの世代が、また、違いますよね。でも大きな意味では共通するのかな。
五十嵐:だから、塚本さん達の世代があって、その下に藤本さんや石上さんが出て、でもう一回ひっくり返ってるようにも今日見えたかな。さっき藤本さんが聞いたことは僕も聞きたいですね。 |